《星空カフェ》第3章:曇り空の向こう側 2025/01/19 16:02 Share on Facebook Copy URL Report 《星空カフェ》第3章:曇り空の向こう側星空観察会の日が近づくにつれ、紬と陽翔は準備に追われていた。カフェの一角には、星座の説明パネルや手作りのランタンが並べられ、店内はますます星空のような雰囲気に包まれていく。「これ、どうですか?」陽翔は手に持った紙製の星座早見表を紬に見せた。彼が用意したそれは、カフェの優しい雰囲気にぴったりのデザインだった。「わぁ、素敵ですね。星座が苦手な人でも楽しめそうです。」「でしょう?この町に来てから、少し星に詳しくなったんですよ。」陽翔の言葉に、紬はくすっと笑った。「星って、見上げると少し心が軽くなりますよね。」「……そうかもしれません。」準備は順調に進んでいた。けれど、イベントの前日。空はどんよりとした厚い雲に覆われていた。迎えた観察会当日。町の広場には、紬と陽翔が用意したランタンや星座の飾りが並び、たくさんの人が集まっていた。子どもたちが星のランタンを手に走り回り、大人たちはカフェ特製の温かい飲み物を片手に談笑している。けれど、空は…相変わらず、厚い雲に覆われたままだった。「これじゃあ、星は見えそうにないですね。」陽翔が空を見上げながら言うと、紬は静かにうつむいた。「……やっぱり無理だったのかな。」たくさんの人が集まってくれたのに、肝心の星が見えない。紬の肩が、ほんの少し落ちたように見えた。陽翔はそんな紬の様子に、何か声をかけたいと思った。ふと、カフェで見たノートのことを思い出す