《星空カフェ》第3章:曇り空の向こう側

《星空カフェ》第3章:曇り空の向こう側

星空観察会の日が近づくにつれ、紬と陽翔は準備に追われていた。
カフェの一角には、星座の説明パネルや手作りのランタンが並べられ、店内はますます星空のような雰囲気に包まれていく。

「これ、どうですか?」

陽翔は手に持った紙製の星座早見表を紬に見せた。
彼が用意したそれは、カフェの優しい雰囲気にぴったりのデザインだった。

「わぁ、素敵ですね。星座が苦手な人でも楽しめそうです。」

「でしょう?この町に来てから、少し星に詳しくなったんですよ。」

陽翔の言葉に、紬はくすっと笑った。

「星って、見上げると少し心が軽くなりますよね。」

「……そうかもしれません。」

準備は順調に進んでいた。
けれど、イベントの前日。空はどんよりとした厚い雲に覆われていた。

迎えた観察会当日。

町の広場には、紬と陽翔が用意したランタンや星座の飾りが並び、たくさんの人が集まっていた。
子どもたちが星のランタンを手に走り回り、大人たちはカフェ特製の温かい飲み物を片手に談笑している。

けれど、空は…相変わらず、厚い雲に覆われたままだった。

「これじゃあ、星は見えそうにないですね。」

陽翔が空を見上げながら言うと、紬は静かにうつむいた。

「……やっぱり無理だったのかな。」

たくさんの人が集まってくれたのに、肝心の星が見えない。
紬の肩が、ほんの少し落ちたように見えた。
陽翔はそんな紬の様子に、何か声をかけたいと思った。
ふと、カフェで見たノートのことを思い出す

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