言葉なく冷たく(ヘルダーリンの詩「生の半ば」)

言葉なく冷たく(ヘルダーリンの詩「生の半ば」)
今日は久々にシューベルトの歌曲集《冬の旅》を聴きました。渡辺美奈子著『ヴィルヘルム・ミュラーの生涯と作品』を読み、《美しき水車小屋の娘》と集中的に格闘したおかげで、聴き慣れた《冬の旅》にも新たに気づくところが多々ありました。さて《冬の旅》の第4曲〈氷結〉で雪野原に花を探すくだりがありますが、ミュラーがヘルダーリンの詩「生の半ば」に影響を受けた可能性を渡辺先生は指摘しています。ランゲ=アイヒバウム著『ヘルダリン 病跡学的考察』によれば、「生の半ば」は「精神病がはっきりした」時期に書かれたといいます。

Die Mauern stehn
Sprachlos und kalt, ...

壁は立つ
言葉なく冷たく

などという詩句は、「彼の周囲のものは患者にとって疎隔されてよく分からないものと思われ、無意味な、つかみ難い遠くの方へと隔たっていると思われた」とランゲ=アイヒバウムが評するように、ヘルダーリンと病を同じくする私にも他人事とは思えぬ不気味さをもって迫ってきます。悲しいかな、どこで花を摘もう、冬になったら?どうして言葉を見つけよう、精神が荒廃したら――?

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